今回の『ストーリーライターズ・ナイト』は全4部で構成され、はじめに登場したのはこのトークイベントのホストである藤津亮太氏と佐藤大の二人。客席には佐藤大が実際に執筆したシナリオのコピーが配られ、モニターに映し出された作品を鑑賞しながら、シナリオの成功例、失敗例など具体的なシナリオ作業についてのトークが展開されました。途中脱線話をたんまりと含みつつも、会場のお客さんは配られたシナリオに資料に目をやりつつ、二人のトークに熱心に耳を傾けていたようです。
またアニメ脚本の話だけでなく、文章を書くという行為の一環として、佐藤大がブレーンとして参加している小学館のガガガ文庫の話題にも。最近ではいわゆるライトノベル作家と呼ばれる人たちがアニメ脚本家としてデビューするパターンもあるようで、お客さんから寄せられた「どうしたらアニメ脚本家になれるのか?」といった質問の答えの一つに、“ライトノベル作家としてデビューする”という選択肢もあるのではないかと思います。
そしてトーク中盤にサプライズが。なんと現在大ヒット上映中の『時をかける少女』の細田守監督が、わざわざこのイベントに駆けつけてくれていました。大きな拍手によって迎えられた細田監督。司会陣とのわずかながらのやり取りでしたが、会場もこのサプライズによって徐々に盛り上がってきた様子。
そして休憩を挟み、一人目のゲストである山賀博之氏が涼しげな浴衣&下駄スタイルで登場です。山賀氏が『超時空要塞マクロス』に参加することになったきっかけ、劇場公開作品『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のシナリオを書くことになったいきさつから、脚本家、監督、プロデューサーと、様々な視点を持つ山賀氏ならではのトークが展開されました。さらに「僕には“ロボット愛”がない」、「思い返してみれば、脚本は初稿しか書いたことがない」という驚きの告白まで。「どうしたら脚本家になれるのか?」というお客さんからのアンケートの問いには「とにかく書くこと。書かなければ脚本家にはなれない」とのお答え。約一時間のトークはあっという間に終了してしまいました。
二人目のゲストは大河内一楼氏。編集者、ライター、ゲームデザイナー、小説家などを経て、30歳を過ぎてからアニメ脚本家としてデビューしたという異色の経歴を持つ大河内氏。話題は初めて脚本家として参加した作品『∀ガンダム』(富野由悠季監督作品)から、サンライズの最新作『コードギアス 反逆のルルーシュ』まで。最近ではシリーズ構成としても活躍をしている大河内氏ですが、「もともと脚本家になるつもりはなかった」、「40歳過ぎて脚本家をやれている自信がない」といった衝撃発言もありつつ、大河内氏ならではの切れ味鋭いトークが展開されました。
そしてラストは4人が再びステージに集結。締めのトークとして、事前にお客さんに配られていたアンケート用紙からの質問に答えます。藤津氏が選んだ最後の質問は、「脚本家になるために、これだけは読んでおけ、これだけは見ておけという作品は?」。佐藤、大河内氏が長考に入る中、山賀氏が最近はまっている本という前置きで挙げたのが “世阿弥”。なんでも世阿弥の著書には、世の中を上手に渡っていくための“How-To”が詰め込まれており、それが企画会議の役に立つ…とか?
そんな意表を突いた話題も展開しつつ、約3時間半に渡るトークイベントはあっという間に終了。終わってみれば平日で、しかも初回の認知度の少ないイベントにしては実に大勢の方にお越し頂き、非常に充実したトークイベントとなりました。
終了間際には佐藤大が「次回のストーリーライターズ・ナイトは、年末か来年1月に行いたい」と、第二回目の開催を早くも宣言。さて、第二回目、三回目はどんなゲストをお呼びして、どんなイベントになるのか…?(実は今回のイベントの最後に次回ゲストとして登場していただく予定の脚本家さんにもご登場いただいたのですが、それはご来場いただいたお客さんだけの秘密ってことで!)
次回の『ストーリーライターズ・ナイト』は、是非ご自分の目でお確かめください!
(2006.9.13)
次回のイベントレポートでは、出演者、ゲスト、来場していただいたお客さんからいただいたコメントを掲載する予定です。お楽しみに。
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